もともと鳩は、地中海沿岸や中近東にいて、正式には河原鳩(カワラバト)と呼ばれています。 その名のとおり河原の岩場に巣を作り、種子や穀類を主食として いるので、人のいる所には馴化し易い性質をもっていました。比較的人との付き合いは長く、8000年以上前位に人類が色々な建物を作り始めた時に、これら の建物に巣を作ったと思われます。旧約聖書が書かれた頃には、すでにカワラバトの帰巣本能の能力が分かっていたようで、 この性質を利用して、ギリシャ時代には、戦地からの戦況報告や、漁師の舟からの漁や帰港の連絡などに使っていたようです。 第一次・第二次世界大戦でも、電波による通信は敵に傍受される危険があるので、鳩による通信手段が重宝されたようですが、 近年はもうそういった使い方は殆どされていません。戦争に使われた名残として、靖国神社に軍用犬、軍馬とともに軍鳩が祭られていますが、余り知られていな いようです。
公園、広場、駅前、神社などにいる鳩は、ドバト(土鳩、堂鳩とも書く人も
いる)と呼ばれ、
レース鳩とは体格や帰巣能
力に大きな違いがあります。レース鳩はドバトといっしょに生活はできません。生まれてからずっと、自分で餌を探
したことがないのと、食べ物が違うからです。そのため、自分の鳩舎に帰れないレー
ス鳩は、他の鳩舎に入るか、弱って他の動物、例えばカラスや猛禽類、猫な
どの餌食になったりすることも多くあります。ですから、もし脚環のある迷鳩を保護した場合は、下にも書いてあるように脚環を確認して
所属の協
会に電話して飼い主を探して下さい。
一般にレース鳩は、
骨格が太くがっしりしていて、いかにも強健そうに見えます。脚も太く、嘴も短く太く、鼻瘤も大きいのが特徴で、能力的には帰巣性や飛翔力はドバトと比べ
何倍も強いも のです。ドバトとレース鳩を簡単に見分けるには、別にも書いているように、脚環が
あるかないかによって判断できます。脚環があるのが レース鳩で
す。通常2つの脚環をしていてID番号(生まれた年と協会名と協会の連続ナンバーが書かれて
います)の書かれたものと個人用脚環(持ち主の住所や電話番号が書かれています)の脚環が両足にはまっているので、誰にでも分かります。
鳩レースの勝敗はレース鳩の帰省本能や体力の強さで決まります。そのために何
代も優秀な血統を掛け合わせて優秀な鳩を
作り上げています。そのため由緒正しい血統書のレース鳩は大変高価です。この優秀な鳩を作り出すことを、「作出」と言います。「作出」には豊かな経験と、
知識が要求されます。また、せっかくの優秀な血統の鳩も、適切な訓練を積まないと、実際のレースに勝てる強い鳩にはなりません。この訓練は鳩の年齢や、季
節に合わせたきめ細かい計画に基づいた合理的なものが必要です。優秀な鳩舎は的確な目標を立てて、「作出」を進 めます。
鳩の飼育環境は、鳥一般にいえることですが、風通しが良く日のよく当たる場所が最適です。但し、室内はある程度暗いほうが鳩は落ち着きます。
湿度の高いのは衛生上問題が大きいので、出来るだけ乾燥した状態を保つことが望まれます。ですので、鳩舎の材質もその点を考慮して、
塗装しない木材を使うのがベストです。床の糞の掃除でも、
水洗いは避けます。日陰で風通しの悪い場所での多数、過密状態での飼育は、病気の発生率が高くなります。
また、繁殖つがい率の高い鳥なので、すぐに番(つがい)になって子供を際限なく作り、密飼いになり環境が悪化することがあるので、
注意が必要です。1坪(畳2枚の広さ)で40羽が限度です。鳩は集団を好むますが、番以外は隣同士くっつくことを嫌うので、
顔を合わせないように板で間仕切る必要があります。しばしば場所取りの喧曄をしますが、順位と自分の定位置が決まれば落ち着くようです。
鳩の寿命ですが、大切に飼われたレース鳩では20歳以上25歳も生きる鳩もいますが、普通は犬・猫と同様に12~15歳ぐらいの寿命です。
繁殖は雌で10歳、雄で12~13歳が限度です。